平成20年2月県議会定例会一般質問新田耕造オフィシャルウェブサイト
平成20年2月県議会定例会一般質問(通算3回目)
本議会の質問に関し我が自民党議員会ではアカデミックにすべしと言うお達しがあり久しぶりに数冊の哲学書を読みました。その中でギリシアの哲学者プラトンの対話集「国家」を読みました。その第7巻に不思議な比喩があります。洞窟のなかに鎖に繋がれた人々がいる。彼らは入口に背を向けていわかべ岩壁の方を向いている。決して振り返ることはできないように手足を縛られている。入口と彼らの間に火が燃えていてその明かりが彼らの背中から照らしている。
彼らはもっぱら前のいわかべ岩壁に映るいろいろな影だけを相手にして一生を送る。岩壁に映るもろもろの影を見てその栄辱も議論している。こうした状態は彼らの一人が自分の鎖を断ち切るまで続く、かれは鎖を断ち切り振り返ってそこに明かりを見る。眩しい。その眩を我慢して洞窟を出て太陽や木や動物を見てまた洞窟にもどり彼は何を見たかを皆に語るが、皆はかれが間違っているのだという。かれは諦めず洞窟を出、探検し、洞窟に戻っては見たままの真実を語る。かくて彼の使命が生まれる。洞窟へもどっては鎖に繋がれた人々を、眩しくて嫌がる人々を、洞窟の外へ連れ出して太陽のもとで水や木や風景を見せる。これが彼の使命である。彼とは哲学者であり、太陽は真実、外へ出る行動が教育の比喩であるとマックスウエーバーは解説しております。
私はこれを読んでこの洞窟で繋がれている人々のように自分が与えられた現状に疑いを持たない人間になっていないかと自問自答、考えさせられました。
さて
質問の第1点目は、ベトナムとの経済交流についてであります。
この1月、友好親善と県内企業や日系企業の進出している工業団地、港湾施設、環境や民情の視察を目的とした派遣議員団の一員として、ベトナム社会主義共和国へ参りました。
ベトナムは、私のなかではベトナム戦争、ボートピープルなど正直明るいイメージではなかったのです。しかし、現地に参りますと、大変な活気に溢れておりました。
つつましい暮らしでも明日への希望に満ちていた時代。昨今流行った映画 「ALWAYS 三丁目の夕日」 、昭和33年頃の日本にあったあの活気がありました。東京タワーの出来た時代です。
人口8千5百万人のベトナムは、面積・人口とも日本より若干規模は小さいものの、全人口に占める40歳以下の割合が8割、1975年のベトナム戦争終結以後に生まれた国民が65%と言う大変若い国です。大乗仏教の仏教徒が多く、先祖供養や年長者を立てる習慣があること、かつては科挙に似た制度があり、そのため国民性も勤勉であることなど、我が国との共通項も数多くあります。教育にも力を入れ、識字率はASEAN第2位の96%、また、主要都市の中学校の授業科目に日本語が導入されており、今回の訪問でも、ハイフォン市からは日本語教師の派遣を熱望されました。全体的に大変親日的な国であります。また、我が国からの今年度の援助誓約額は、円借款など総額1,200億円余りで、日本が最大の援助国であります。
18年10月時点での在留届提出邦人数は4,700人余りです。トヨタ、日産、ホンダ、キャノン、松下といった日本有数の企業に加え、多度津町に本社がある四変テックも進出しています。
さて、その視察ですが、ベトナムでは、北部に位置する人口3百万人余りの首都ハノイ、その外港的な都市で人口180万人のハイフォン市、人口約7百万人のベトナム最大の都市ホーチミンなどを訪ね、日本大使館の服部大使をはじめ、ジェトロ・ホーチミンの吉岡事務所長、ハイフォン市人民評議会のニーア副議長、人民委員会のヒェップ投資計画局長やディン教育局長、その他日本からの進出企業の社長といった方々と会談を行いました。
現地で私の聞いたベトナムの民情についてお話しすれば、最近のGDP成長率は8%前後、ガソリンは1リッタ150円、ホーチミン市の中心街の地価は、日本円にして坪当たり300万円から400万円、同市で売出中の100㎡のマンション価格は2,000万円から3,000万円で、これが1日で完売。しかも現金です。
今日の政治・経済は、国内だけで完結するものではなく、国際情勢に大きく影響をされることは言うまでもありません。こうした中、いわゆるBRICsに続くであろうベトナムについて、我々県議会議員が、大使館、地方自治体、貿易機関の責任者から、生の情報を聞き、また日々成長している経済状況を目の当たりにできたことは、大変意義深く、今後の県政に役立てることができるものと確信しています。
県民の代表である我々も「井の中の蛙」であってはなりません。より高い視野に立った判断が求められています。今回、この派遣議員団に参加し、こうした視察の重要性を強く感じさせられました。特に、今回の様な社会主義の国では、個人の視察では限界があり、県議会の派遣だからこそ実現できた会談や視察が数多くありました。
さて、そこで、経済の国際化に関してでありますが、お向かいの岡山県は、ベトナムと「経済交流に関する覚書」を締結し、今年度は、ホーチミン、ハノイでの商談会の開催、先月にはベトナム全土を支援対象地域とした「海外ビジネスサポートデスク」を設置して、日系企業のベトナム進出を支援しております。
先ほども申し上げましたように、ベトナムは、我が国とも共通項が多く、親日的な国であります。さらに、今後も高い経済成長が見込まれ、すでに本県からの進出企業もあります。また、ベトナム経済も外資を強く求め、日本語学級の教師を求めています。こうしたことから、本県にとっても、経済交流のパートナーとしては、ふさわしい国の一つであると思います。
そこで、本県もベトナムと県レベルで経済交流を行い、本県産業の国際化に努めるべきであると考えますが、知事のご所見をお伺いします。
質問の第2点目は、県産品の海外展開戦略についてであります。
知事は、平成20年度当初予算案の説明の中で、「農水産物の海外におけるマーケットの確保に向け、台湾、マレーシア、シンガポール等の百貨店や和食レストランをターゲットとして販路開拓に取り組む。」旨の説明をされました。
県においても、県産品の海外販路開拓や中小企業の国際化を積極的に支援すべきであると考えます。
先ほどの質問とも関連しますが、海外視察に行き、改めて思ったことは、我が国のインフラは、こうした国々と比べると大変進んでおります。
そして、今、我々に求められているのは、空港、港湾、道路などの物流施設や、インターネットなどの通信網、こうしたインフラを使って何を行うか、が問題であります。例えて言えばパソコンを作ったり性能を競うのが目的ではなく、パソコンを使って何をするのか、小説を書く、絵を描く、会計処理をする、音楽を造るのかと言った問題であります。
今年北京で開催されるオリンピックの事前合宿地として、多くの欧米諸国が、丸亀市や坂出市を含め、我が国で最終調整を行うようです。欧米諸国から見れば、北京も日本の各都市も、飛行機で数時間の距離だからたいした問題とは思っていないのです。そういう意味では、世界は急速に小さくなっています。
また、インターネットの普及によって、その気になれば地球の裏側の情報が入手可能なことは当たり前で、我々のパソコン画面に出るネット広告は、我々個々人の趣向にそった広告が配信されるいわゆる「検索系」といわれる広告です。
このことは逆に言えば、「讃岐うどん」の好きな人を世界中から特定し、「讃岐うどん」の広告をその人に流し、地球の裏側からでも注文が来れば飛行機で届けると言ったことが、物理的には可能な社会です。
地球規模で見ますと、人口はまだまだ増え続けています。農水産物の生産が増えなければ、食料不足の時代は必ず到来します。
こうした状況を考えますと、本県においては、こうした既存のインフラを踏まえ、世界規模での県産品の海外販路開拓のための「戦略」と、それを支える人材育成が大変重要になってくると思います。つまり、国際的な視点を持つ人材を育て、販路を世界と定めた戦略づくりが必要なのではないでしょうか。そして、人材育成のためには、海外の第一線で経験を踏ますことも大切であると考えます。先ほどのベトナム大使館には東京都から派遣の職員もいました。
そこで、今後、県産品の海外での販路拡大を図るための基本戦略と、それを支える人材育成の取り組みについて、知事のご所見をお伺いします。
先週、新聞、TVで見ましたが、日本のテレビドラマ「蜂蜜とクローバー」をリメークした台湾のテレビドラマの撮影が先週から県内で行われています。瀬戸大橋をバックにしたショットやうどんを食べて台湾の人気俳優達が「さぬきうどんおいしい」と片言で喋っていました。一方、「世界麺フェスタ2008インさぬき」が本年の5月から6月にかけて民間主導で県内各地で行われます。益々さぬきうどんの知名度、注目度は国内外で上がるでしょう。
質問の第3点目は、台湾における「讃岐」等の商標問題についてであります。
今月初めには、日本や台湾の新聞、テレビで報道されましたが、台湾の企業が、「讃岐」という単語を、漢字、ひらがな、カタカナ、アルファベットの表記で、9年前に商標登録を行っていることが判明しました。それも、飲食店、惣菜、麺の種類、すべての分野で登録されているとのことであります。わたくしも昨年暮れにこの問題を「日本うどん学会の方々」からお聞きしておりました。
本議会の経済委員会において、我が党の大山議員が質問したところでありますが、県の対応には全く納得がいきません。
翌日の新聞の見出しでは「県が自由使用を要請」「使用許可を県交渉中」「県対応検討」などと書かれておりましたが、県の対応はまるで”ひとごと”のような調子にしか思われません。
今、本県にとって、「さぬきうどん」は一番のブランドであります。しかし、肝心の「讃岐」と言う言葉が、台湾では、自由に使うことができないのです。これは、台湾で、「讃岐」に関連する事業を営む人だけの問題ではありません。県が情報発信のため「さぬき大使館」に認定した台湾のうどん店と、讃岐の商標を持っている台湾の企業との問題ではありません。この問題は、地方の文化と伝統を守るのかどうかという問題であります。アイデンティティー、すなわち自己の存在証明の問題であります。
県としてきちんと資料を揃え、「讃岐が古くからの地名であり、国際法に照らしても、商標登録に相応しくない。」という反論を台湾政府機関に対し申し入れる問題であります。文化や伝統は守られてこそ価値があり、この中に地名も入ると思います。正に官と官の問題であります。
一方、皮肉にも県は来年度予算案で「観光地や県産品等の付加価値や市場競争力を高め、市場から選ばれる地域を確立するため、香川県そのもののブランド化に向けた戦略的情報発信を展開するため」として「香川ブランド戦略推進事業」に3,500万円を計上しております。
にほんうどん学会が沖縄、福岡、香川、愛媛、徳島、愛知の若者に聞いた調査によると、うどんのブランドのなかで最もよく知っている名称はやはり「さぬきうどん」でした。
香川にとって「さぬきうどん」ほどブランドとして確立したものは有りません。今ここにあるブランド問題を避けて、この予算で何をしようというのでしょうか。この問題に真摯に取り組むことが、国内外での宣伝効果も含めて「讃岐」、「香川」のブランド確立につながるものと確信します。
また、こうした地名の商標登録の問題は、今後、各国で発生する可能性があります。ここで、毅然とした対応をしなければ、将来に禍根を残すことになります。そして、「讃岐」を守るのは、「讃岐」の人しかいないのです。「讃岐」を守るために、愛媛や徳島、高知、東京の人に頼んでも駄目です。ここはまず県が主体となって汗をかかなければ、誰も動きません。国際的な事案であり、専門知識や一元的な情報収集・管理体制も必要となるでしょうが、このために時間とお金を費やしても、県民も納得すると思います。
そこで、この台湾における「讃岐」等の商標問題について、県は今後どのような方針で対応していくのか、知事にお尋ねします。
質問の第4点目は、地域手当の導入についてであります。
「県政は県民のためにある」「徹底した地方分権の推進」 「中央集権型行財政システムから脱却し、新しい地方分権型システムの構築を図る必要がある」。これはどなたのお言葉なのでしょうか。
国の制度をそのまま使ったこの「地域手当」を、どのように考えればいいのでしょうか。先の11月定例会で、私は、人事委員会委員長に「地域手当の導入を勧告した理由」をお尋ねしました。これに対し、委員長からは「民間給与が職員給与を1%余り上回っており、較差解消を図る必要があるが、その手段がないため、導入せざるを得ないとの結論に達した。」との答弁をいただきました。較差があるなら堂々と是正をすればよいではありませんか。なにか姑息な印象を受けました。
そのときにも申し上げましたが、国はその対象が北海道から沖縄まで日本全国であるため、地域間の調整を図ろうとする地域手当の趣旨は理解できます。しかし、本県では、わざわざ高松市とそれ以外の市町で「へんば」となる制度を導入する必要があるのでしょうか?
また、総務省の資料によると、四国の県庁所在地で物価が最も高いのは高知市で、高松市は徳島市と同率2位です。にもかかわらず、国が、四国四県で唯一、高松市の勤務者だけを対象に地域手当を導入したからといって、本県もこの制度を導入する必要があるのでしょうか。他の四国の県にはこの問題は発生しません。
そうでなくても、住民からは、「公務員には色々手当てがある。」といったことをよく聞かれます。給与水準が高い安いもさることながら、公平公正で透明な制度が、全体の奉仕者である公務員の手当には求められているのです。
本議会において、地域手当の制度はつくるが、向こう3年間は実施しないということを、3つの条例により提出しているわけでありますが、その3年間に国が地域手当を止めたらどうするんでしょうか? 普通に考えれば実施するときに条例案を出せばよいことではありませんか。 一般の人に聞くと「これこそお役所仕事の典型で事務の無駄だ」と言われました。ま、こういう質問もないはずです。
知事は、本議会の開会に当たり、県政運営の所信として次のように述べられました。「国が地方のやるべきことを決定する、これまでの国と地方の関係を抜本的に改革し、『地方が主役の国づくり』を強力に推し進めなければなりません。」
この言葉を聞き、私は心よりの拍手を送りました。知事には、是非とも、真の「地方が主役の国づくり」を進めるために、獅子奮迅の活躍を期待しております。
給与制度は、官であれ民であれ、組織の根幹をなすものです。その制度を自前で決めることができないというのでは、本県の地方分権への道のりは、ほど遠いものと言わざるを得ません。
そこで、知事が力説する地方分権の推進に逆行する、また勤務地によって職員の間に格差が生じる地域手当を導入する理由を、知事にお尋ねします。
質問の第5点目は、中央病院の移転整備に伴う優秀な医療スタッフ確保策についてであります。
中央病院の移転整備については、すでに本定例会で数々の議論が行われておりますが、移転整備に関し、私が力説したいのは、「仏造って魂入れず」であってはならないということであります。どんなにいい施設を作っても、どんな最新の医療機器を入れたとしても肝心の優秀な医療スタッフが確保できなければなりません。 私の知る限りでは、平成14年に開院した静岡県立静岡がんセンターが、がん医療の第一人者として知られる国立がんセンター研究所山口副所長を静岡県知事自らが働きかけ総長に招いたことにより、優秀な医療スタッフを確保することができ、質の高い病院運営が行われていると聞いております。
この県財政が未曾有の危機的状況の中、長い時間と多額のお金をかけて整備を行うのであれば、我が国でもトップレベルの病院、少なくとも中四国で誇れる病院を目指さなければなりません。そこで、中央病院の移転整備に伴い、これはすべからく知事のお仕事ではないかと思いますがどのようにして優秀な医療スタッフを確保するおつもりなのか、知事にお尋ねします。以上で私の質問を終わります。
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